映画サスペリアのレビュー・感想

ホラー映画を極めつけた医者と解剖学に秀でた映画監督との合作。
というような冒頭での殺人鬼と女との殺人劇。
おどろおどろしい交響曲も重なってか、どこかのコンクリート殺人事件を思い浮かばせるかの如く破天荒な演出にも目を見張りました。


アルジェントの真骨頂はやはりなんといっても、色にあり音にあり。
色は赤を基軸として、常に見る側に死へのイメージを植え付ける。
黒は人間の恐怖の象徴。心の闇は常に黒です。
白も使われており、これがいわゆる平和の象徴。
こういったバランスがアルジェントの代名詞にもなる三原則の苦労人。
まあ生まれ持った才能ではあるが、とくに芸術家というものは
そういうもんですよね。だがしかし、このお方はリンチを出して失礼な
わけですが、リンチは絵画師に憧れ、その才能が世間に認められず。
苦労人でないリンチは楽な映画産業の道に進む。そしてやはり絵で出せなかった
才能を映画で開花させた。まあ個人的にはこちらの方がセンスはあるし、
彼にとってよい事。アルジェントは映画産業のみの選択。まあ評論家
出身なので、大概の事はおわかり。(また無駄話が入る)

演出はあまり芳しくない作り。
物語の創作性は下手な訳ですが、ホラー性の持つ音の使い方が良い。
怖がらせるシーン毎の音ではなく、そこまでに持っていく過程での
音が実に心地良い。

殺される役者のリアリティ。これが爽快なまでに恐怖心をあおがせる。
冒頭の殺戮シーンはこれがアルジェント流のセンス。なので
そこの下手さはおのおのの映画感性。僕的にいえば、下手は下手で
どうだってよくて、殺される女の表情は生きた屍として成立。

ヒロインに訪れるばばあの“来るぞ来るぞ”演出が最高にええで。
扉を開けたら“こんにちわ”演出が最高にええで。
この二つの演出は稀に見るホラーのホラー。
いやあ、完璧だぜ。

物語としてはとてもつまらない。
中身がすっからかん。でも怖い。

たとえば、ばばあがアメリカ娘を殺せ殺せシーン。
そのばばあと訳のわからんばばあの僕どものシーン。
そこを覗き見しちまったヒロイン。
すごく狭さを出した。その狭い感が怖い。